武道の「心」を伝え育む -「礼法」再考- 2008年12月7日開催

イヴ・カドゥ氏 / Dr. Yves Cadot

イヴ・カドゥ氏

1971年生まれ。1989年、高等学校卒業。1992年4月から1993年3月まで、立教大学に留学。2006年、フランス国立東洋言語・文明研究所(INALCO)より博士号を取得。博士論文はKano Jigoro et l’élaboration du judo - Le choix de la faiblesse et ses conséquences (『嘉納治五郎と柔道の発展 ― 弱さの選択とその影響』。
1997年から1999年まで、富士産経グループパリ支部に勤務。2000年から2006年まで、大学や研究所の非常勤を経て、現在、INALCO非常勤講師、フランス国立学術研究所(CNRS)研究員。INALCO日本学会、日本文化研究センター研究会(CNRS)に所属。柔道五段。日本学博士。
博士論文は865頁にわたり、その内容は「序」、「展開」、「方法」、「叙説」、「結論」と「付加」の6章からなっている。論文の中心部は「展開」、「方法」と「叙説」の3章である。「展開」では柔術から講道館柔道までの展開過程を嘉納師範の性格構造とその柔術を通じた人間形成を、同時に詳細に述べている。「方法」においては講道館柔道の技術と思想について、技の選択から学術的教育的精神的な側面まで浮き彫りにしている。そして、「叙説」では講道館柔道の社会的な意義・役割や講道館の建設について触れている。
この論文に駆使した参考文献を大まかに紹介すれば、まず嘉納治五郎師範自身が執筆した1888年から1938年までの書物・論文・記事(『嘉納治五郎大系』、『嘉納治五郎著作集』所収)、さらに嘉納師範と柔道と柔術について出版された日本語の書物・論文・小説など(横山健堂著『嘉納治五郎伝』、『日本教育史資料』、隈本実道著『体育演武必携』、『講道館柔道科学研究会紀要』、富田常雄著『姿三四郎』など)である。博士論文はこれらの史資料を熟読した上で執筆されたものである。その上、フランス語・英語の適切な書物も集め読んで論文主題解釈に生かした。